2023年03月06日
三の丸クラシックス2023春Ⅰ 西由起子とミント・フレイバーズ −卒業のうた−
小田原出身のソプラノ歌手、西由起子さんが音楽監督を務めておられる女声アンサンブル「ミント・フレイバーズ」のコンサートが、小田原市民ホール開館一周年記念事業「三の丸クラシックス2023春Ⅰ~西由起子とミント・フレイバーズ - 卒業のうた -」と題して開催されました。音楽監督の西さんには日頃から大変お世話になっていますし、ミント・フレイバーズの演奏はYouTubeで接しているものの、生演奏は2020年2月以来遠ざかっているので、この機会になんとしてもと小田原に向かいました。
小田原三の丸ホールに入るのは2回目、前回は大ホールでしたから、小ホールは初めて。開演2分前に滑り込むと、ほぼ満席のお客様、そして、客席全体からあたたかくやさしく肯定的な空気感。こういう雰囲気は音が出る前でも不思議とわかります。
指揮と司会進行を兼任する西さんは、この会の雰囲気に寄り添った言葉で、ミント・フレイバーズの成り立ちや曲紹介を丁寧に語りかけることで、舞台と客席の距離を近づけ、慕わしい雰囲気を醸成していました。インタビューで時折見せる、先生と教え子?のやりとりも楽しい。
冒頭のホルストによるAve Mariaは二重合唱、名曲だけに少々気になるところはありつつも(ごめんなさい!)、けっして易しくないこの作品に気負いなくまっすぐに対峙し、ホルスト作品の魅力である色彩感や旋律の美しさを表現されていました。続くラターとチルコットの作品はいずれも私には親しみと懐かしさもあって、このタイミング、そしてミント・フレイバーズの音で聴かせてもらえて嬉しい。
今回はヴァイオリンの独奏でフォーレとエルガーの小品(タイトルに「歌」の含まれる)がプログラム。いずれの曲もさりげなく美しくて、特にエルガーの「朝の歌」は聴いたことがあるはずなのですが、初めて接したような新鮮な印象で、さわやかに心に残る演奏でした。
前半最後は、短いソロを交えながら「日本の四季の歌」。これまで、ミント・フレイバーズの演奏では日本語の作品に多く接してきたせいか、冒頭から自然と引き込まれていきました。知性を湛えながらも、歌い手と聴き手の境目を感じさせない共感度の高い演奏と佇まい、親しみやすく透明な音色と適切な言葉の扱いは、このアンサンブルだけにある特別な能力だと感じます。
諸事情あり、前半終了後、後ろ髪を引かれる想いで会場を後にしたため、後半は聴くことができず、感想もここまで。でも、このたびの演奏に接する機会を得て、あらためて、ミント・フレイバーズの活動が継続し、ますます発展くださることを願ってやみません。


西由起子とミント・フレイバーズ −卒業のうた−
2023年3月4日(土)15:00 開演(14:30 開場)
小田原市民ホール(小田原三の丸ホール)・小ホール
西由起子(音楽監督・指揮)
神戸裕衣(S)、黒川青葉(S)、杉本可菜(S)、高橋真衣子(A)
野邊愛美(S)、荷田直美(S)、古家未希(S)、山本夏子(S)、鈴木彩音(P)
子田佳里奈(S)、島崎結衣(S)、力徳笑莉子(S)、渡邊絢香(MS)
猪口真理(P)、菊地理恵(Vn)

ホルスト:アヴェ・マリア
ラター:主があなたを祝福し/慈しみがありますように
チルコット:ジャスミサ より 『キリエ』

フォーレ:子守歌 op.16
エルガー:朝の歌 op.15-2

みかんの花咲く丘/夏は来ぬ/赤とんぼ/冬景色
~休憩~

おもいでのアルバム/Believe/卒業写真/蛍の光
旅立ちの日に/いのちの歌/未来へ
演奏会の様子は、小田原三の丸ホールのFacebookでご覧ください。
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